教育・子育て

2022/09/08

「嫌われる勇気」で話題のアドラー心理学とは?

「嫌われる勇気」という本で一躍知られるようになったアドラー心理学。悩める人に大きな勇気を与えている彼の心理学とは、一体どのようなものなのでしょうか。エッセンスを簡単にご紹介します。

アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)は、オーストリアの精神科医です。精神分析で著名なフロイトの同時代人で、研究仲間だった時期もありますが、見解の相違から後に別々の道を歩むことになります。

「嫌われる勇気」は、センセーショナルなタイトルと対話形式で語られる分かりやすさでベストセラーとなりました。いま続編の「幸せになる勇気」が出版され、こちらも話題です。

アドラー心理学の教え

◎人は自分で目的を定めて行動するもの
アドラー心理学の大きな柱は自己決定論と目的論です。アドラーは全ての行動には何らかの目的があると考えます。ここがそれまでの心理学とは異なる画期的な点です。

従来のフロイト系心理学は、物事には何らかの原因があると考えます(原因論)。たとえば水が怖い人がいれば、子どもの頃溺れたことがあるからと考えるのがフロイト心理学。一方、アドラー心理学では、何のために水が怖くなったのかと考えます。怖がることで誰かに話を聞いてもらえる、プールに入らなくてすむなど、「できない」のではなく「しない」ことで何らかのメリットを感じているからというのが彼の考え方です。できないと思っていることも、実は自分なりに意味を持たせて選択したものだと彼は言います。

◎自分の課題は自分のもの、他人の課題は他人のもの
「課題の分離」をアドラーは説きます。相手の課題を自分の課題として持ち込まないという意味で、悩みの多くはここに原因があるとアドラーは考えます。

たとえば「子どもが全然勉強しなくて困る」という親御さんがいるとします。しかし、勉強しなくて困るのは親ではなく、子どものはずです。アドラーは子どもの問題は子どもに解決させよといいます。親は、勉強しないとどうなるのか子どもに教えた上で、どうするかは子どもに委ねる。
その結果どうなろうと、そこから子どもは学びを得ればよいのです。先回りしてしまうことは逆に子どもから学びの機会を奪います。あれこれ気を揉まずに、子どもを信じて見守る勇気が大事だということです。

◎他人の期待を満たすために生きるな
「嫌われる勇気」というタイトルは、マズローのいう「承認欲求」を否定することを意味します。
マズロー(アメリカの心理学者)によれば、人には5段階の欲求があり、順に生理的欲求・安全欲求・所属欲求・承認欲求・自己実現欲求と高次の欲求になっていきます。中でも4番目の「承認欲求」は「他の人に認められたい」という欲求で、誰でも多かれ少なかれ持っています。

しかし、他人が認めてくれるかどうかは、他人の問題であって自分でどうにかできるものではありません。自分の意思ではどうにもならないことをクヨクヨ思い悩むな、というのがアドラーの考えです。

◎相手に「してもらう」のではなく、自分が「与える」
アドラーは承認欲求から自由になるポイントとして「共同体感覚」をあげています。認めてもらいたいと思う気持ちは、相手に「認めてくれ」と要求する気持ちが含まれています。そうした利己的な考えではなく、自分が相手にできることを考えてみようというのがアドラーの提案です。

アドラー心理学が教えてくれること

◎悩みは自分が作っている。もっとシンプルに考えよう
アドラー心理学は、物事をシンプルに考えます。他人の課題は他人のもの。悩んでも自分が解決できる問題ではありません。自分の最善を尽くすことに集中しましょう。

◎物事の意味は自分が決めている。自分の人生は自分が決めるもの。
同じことが起きても人によって反応は違います。出来事にどういう意味を持たせてその後につなげるかが、その人の人生を決めていきます。「どうしてこうなったのか」と原因追求するのではなく「どうすればうまくいくのか」を考えて前に進むことが大事です。

◎幸福度を決めるのは貢献度。もらうより与えよう。
他人に認めてもらいたくてあれこれ悩むより、自分が他人にできることを探して取り組むほうがはるかに幸せなはず。与える喜びを感じましょう。

まとめ

アドラー心理学が広く日本で受け入れられた背景には、周りのことを気にし過ぎる日本人の国民性があるように思います。アドラーの心理学はが悩める現代人に向けられた幸福論。一度読んでみてはいかがでしょうか。

TOPページに戻る ≫