教育・子育て

2022/09/08

第5回『勉強しなさい!』はもう必要ない-子ども手帳を使う

小学5年生の男の子と中学2年生の女の子を持つ母親です。
上の子はある程度しっかりと勉強する習慣がついているのですが、
下の子は遊んでばかりで勉強しなさいといつも言っていますが、一向にやってくれません。

上の子を見ているので、真似してやると思ったのですが、
まったく逆の状態で、これからが心配です。
塾に行かせて勉強させる方が良いのでしょうか。
また、どうすれば勉強するようになるか、教えていただければ幸いです。
(仮名:稲垣さん)

○○しなさいはNGワード!

この質問はおそらく多くの保護者の方々に共通している内容ではないでしょうか。
勉強をやらなくて困っているということは古今東西問わず、よくあることです。

勉強をやらせるために、まずは塾へ行かせれば良いという考え方が浮かびますが、
塾に入れてしっかりやる子もいれば、そうでない子もいるため、
一概に塾へ入れれば勉強をやるようになるだろうと期待すると裏切られることがあります。

勉強しない理由は様々考えられますが、代表的な理由を一つあげましょう。

それは、子どもに対して親が「勉強しなさい!」と言ってしまうことなのです。
「勉強しなさい!」と言われて、「はい!勉強します!」という子どもはいません。
それよりも、むしろ「勉強とは嫌な事である」という意識をインプットしてしまう可能性すらあります。
命令的な指示は効果がでないばかりか、逆効果になる可能性も秘めているのです。

『勉強しなさい!』と1回言えば、偏差値が1下がる!?

ある中学校2年生の子どもを持つ親御さんとの面談を紹介しましょう。
入塾して初めての面談でした。

私が「お子さんの家庭での勉強の様子はどうですか」と尋ねると、
お母さんは、「一切やりません。学校の宿題もままならない状態なので塾に入れて少しでも勉強してくれればと思っています」と
切実な声で答えてくれました。

以下は、その面談の続きです。

私:「私どもの塾では成績を上げるために、
しつけ(挨拶、時間を守る、整理整頓)がまずは重要である
という考えの下に指導しています。
生活習慣についてはしっかり指導していきますがよろしいでしょうか。」

母親:「はい。お願いします。徹底してやってください。」

私:「ところで、お子さんが家で勉強をやらなくなったのはいつ頃からですか。」

母親:「中学校に入ってからです。
小学校の頃も家では宿題以外あまり勉強しませんでしたが、
学校の勉強はなんとかなっていました。」

私:「中学校に入ってから、お母さんはお子さんに対して
『勉強しなさい!』という言葉を家でお子さんに使っていませんか。」

母親:「ええ、毎日言っているのですが、一向にやりません」

私:「実は『勉強しなさい』という言葉が
子どもを勉強嫌いにさせるという事実をご存知ですか。」

母親:「え、そうなんですか。でも、うちの子は言わないとやらないのです」

私:「それは言うから、やらなくなってしまうのです。
親は子どもにとって教師ではないので、勉強のことを言われると、
子どもは無意識のうちに反発心を持ってしまいます。

例えば、お母さんが家でご主人に『今日は肉料理にしろ』『明日はカレーを作れ』
と言われるよりも『今日の夕飯とても美味しかったよ』と言われたほうが、
次も美味しい料理を作ろうと思われるのではないでしょうか。
人間の心というものはそういうもので、
やる気は強制された言葉からは出てこないのです。」

「『勉強しなさい!』と1回言えば、偏差値が1下がると思ってください」
ということも伝えました。

これは一つの例えなので、本当に1下がるものではありませんが、
逆効果になりますというメッセージとして使っています。

では、「勉強しなさい!」という言葉を使ってはいけないと言われてしまうと、
今度は親御さんにストレスが溜まってしまいます。
いつか何倍にもなって爆発してしまうと、さらに被害が拡大しますね。
では、どうすればよいのでしょうか?

これには2つの方法があるのです。

子どものやる気を引き出す方法<その1>

1つ目は、「勉強しなさい」という言葉を「やるべきことをやりなさい」
と言い換えてしまうことです。

親は子どもにとって教師ではないので、子どもは無意識のうちに
親から勉強のことをあれこれ言われることを嫌っています。
しかし、人としてあるべき行い(道徳や倫理観など)は親から言われても、
うるさいと思いながらも無意識に受け入れてしまうものなのです。
ですから、「やるべきことをやる」という言葉には、
道徳的観念があるので、子どもは反発できません。

しかしそうは言っても、子どもは勉強するようにはなったが、
積極的に勉強するようになるとは限らず、「やるべきことをやりなさい」
と言われたから仕方なしにやったというのも困ります。

そこで、子どもの心が前向きに勉強に向かわなければ、2つ目の方法を使います。

子どものやる気を引き出す方法<その2>

それは、「子ども手帳」を使うことです。
手帳といっても独自の子ども手帳が存在するのではなく、市販のお気に入り手帳を使います。

そこにやるべき事(勉強やお手伝い、宿題など)を書き込み、
やり終えたら赤ペンで消すというだけのことです。

一般に、子ども(幼稚園~高校生)は手帳を持ちません。
それは手帳を持つだけの予定がなく、時間割は家庭か学校に決められているからです。
しかも行動がワンパターンであり、ビジネスマンのように
ルーチンワーク以外の予定が入ることはありません。

しかし、子どもの行動をつぶさに観察してみると、やるべきことがワンパターン化しているにも関わらず、
それをしっかりとこなしている子どもは珍しいことがわかります。

特に、多くの場合母親によって「勉強しなさい!」「宿題やったの!」と
半ば叱られてからようやく行動を起こすことが多いものです。

なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか?

それは「勉強」という一見面倒くさく、
魅力的でもない“作業”に心が向かわないためなのです。

“やる状態”へ転換 「子ども手帳」の使い方のポイントと効果とは

そこで心を勉強に向かわせるために「子ども手帳」が登場します。

子どもには手帳を持たせることは早いと考えるかもしれませんが、
実際に「子ども達に手帳を持たせて、そこにやるべきことを書かせ、終わったら消す」
という非常に単純明快な作業をさせるだけで、
従来の勉強しなかった状態から“やる状態”へと180度転換するようになるから不思議です。

さらに「モティベーション」を引き出すために「ポイント化」させます。

つまり、1つの行動(タスク)が終わったら、それが1ポイントに換算されて
累積して貯まっていくようにするのです。
世間では、良い点数を取ったら、ご褒美としてお小遣いをあげたり、何か買ってあげたりすることがあります。

身近な人に聞いても、この仕組みを使って動機づけを高めようとする手段は多いようです。

これは達成したらプレゼントという「結果」に着目したモティベーションアップ
ですが、私が着目した点はこれとは異なります。

ポイントは原則的に、行動(やるべきこと)一つ終われば入ってくるのです。

つまり、「プロセス」に着目をしているのです。

習慣化されることで結果を生み出し 親子でハッピーに

この手帳の目的は、毎日歯を磨くことが当たり前であるように、
勉強も“習慣化”させて当たり前にさせることにあります。
ですから、日々の予定をこなせば、それが即ポイントにつながる
ということであれば、モティベーションは高まるのです。

そして習慣化された勉強は、必ず結果を生み出していきます。
もちろんポイント化については、ポイントのために勉強するようになっては困る
という懸念もありますが、これまでそのような懸念報告はありません。

幼稚園では登園する度に、シールが1枚もらえて貼っていきますが、
はじめはシールをもらうために幼稚園にいく子もいるかもしれませんが、
毎日通園しているうちに、習慣化され、シールのための通園でなくなっていきます。

これと同じことなのでしょう。

この私が考案した「子ども手帳」の使い方ですが、
これまで多くの方に簡単な運用冊子をお渡しし、実行していただいた結果、
即日効果があったとの報告を多数受けました。

それもあり、今回公開しようと思いました。

一人でも多くの子どもが、勉強に前向きに取り組むようになり、
また保護者の皆様の笑顔が子どもに向けられるようになって頂きたいと思っています。

その一つの手段としてこの「子ども手帳」を使ってみるものいいかもしれません。

お子さんの心を高め、毎日の勉強が習慣化されるようになることでしょう。

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