そろばん学習

2022/09/08

第4回「論理より感性が重要」

質問

小6と中2の男の子を持つ、母親です。
近年、ロジカルシンキングつまり、論理的思考が重要であるということで、
子どもたちに論理的に物事を考えてもらうために、
どのようにしたらよいか悩んでいます。

国語や数学、算数でも論理的思考をつけられると聞いていますが、
どうも私が見ている様子だと、そうでもなく、
何か特別に論理的思考をつけられる講座を受けた方がよいのでしょうか。

回答

まさにおっしゃっていただいたとおり、近年、論理的思考の必要性が叫ばれています。
私も、その通りであると思います。
論理とは物事を筋道立てて説明する、または考えることであると思いますが、
学問の世界における「仮説→検証」という構造も論理の一種でしょう。
確かに、論理的に考えることは重要であり、
現代社会においてもこの論理なくして成立はしないことでしょう。
論理的であれば、説明が体系立てられ、わかりやすくなります。

ですからプレゼンテーションや論文などのアウトプットでは、
論理的であることが重要です。
しかし、あまりにもこのアウトプットが重要であると喧伝されているため、
視点がどうもそこだけに行きがちになってしまっているところに
大きな落とし穴があるのです。

つまり、論理の勉強ばかりしていても、
プレゼンテーションの達人にはなっても、中身がなく、斬新さなど皆無となるのです。
では、何か欠けているのでしょうか。それは、「感性」なのです。

参考事例

例えば、国語において読解力が重要と言われていますが、
この読解力とは論理的に読めるかということと同じ意味でつかわれたりします。
しかし、○と○は同じことを言っており、
●と○は反対のことを言っていると認識するためには、
まずは感性で判断しなくてはなりません。

小説の文章では、感性で登場人物の心の状態になって読み進めていくと
解答はおのずから出てくるのですが、どうしても表面的な活字に振り回され、
中身より形を優先してしまい、間違った答えを出してしまうのです。
論理、論理、論理……
理屈でいけばこうだよねと論理を積み上げていくことによって、
結論が出る場合もありますが、
論理で積み上げた結論は実社会では間違っていることが少なくありません。

「A=B、B=Cであるならば、A=C」であるというようには
現実にはなりません。
実際は「A=Cであるようだと直感で感じ(仮説)→
なぜだろうと疑問が出て→ それはA=Bであり、B=Cであろう」
ということがわかり、それを逆に組み立てると、
「A=B、B=Cであるならば、A=C」となるのです。
このときの直感で判断した仮説は感性が生み出したものであり、
論理によって生み出されたものではありません。
この感性抜きには、論理は成り立たないのです。

私が塾で生徒を指導してきて、頭のよい子はこの感性が優れていました。
まずは感覚的に捉えることができるのです。
理屈よりも感覚で捉える力があります。
論理だけが頭の良さを促進しているのではないのです。
世間をみても、論理力よりも感性が強い人の方が、
勉強も仕事もできますように感じます。
理屈ばかりこねる人は仕事ができないとよく言われますが、
まさにこのことを意味しています。

私は生徒の感性を高めるために、
テキストの題材を使いながら高めていきましたが、
家庭で子どもの感性を育てるためにはどうすれば良いかという点について、
ここではお話しようと思います。

子どもの感性を育てる方法

方法は3つあります。
「多くの体験をさせる」
「美しいものに触れる機会を増やす」
「『どう思う?』『どう感じた?』と問いかける」です。

今、子どもたちの日常生活を見てみると
ワンパターンの生活が多いと感じています。
異なる年代の人、自分とは異なる境遇の人、
いつもとは異なる場所に行くことによって人は多くの刺激を受けます。
ワンパターンからは多様な感性は育まれません。
ですから、よく遊ぶ人は感性が高いと言われます。

子どものうちから何でも体験させることです。
特に自然の中での遊びはどんどんやらせてください。
このような身体を使った体験こそが
後々の学力向上に大いに役立っているからです。
(当然子どもにとって悪い刺激になるものは遠ざけなければなりませんが)

次に、子どもには美しいものに触れる機会を増やしてください。
絵画でも、音楽でも、景色や映画など何でも美しいものに触れるようにすることで、感性は磨かれます。
特に、大自然は人間が作り上げたどのような人工物よりも美しく、
それに勝るものはありません。
しかもお金をかけずに触れることができます。
いつも汚いものを見ている環境で育つ場合と、
美しいものを見ている環境で育つ場合では、
その後の感性に大きな影響を与えることは容易に想像できるでしょう。
ですから身辺を美しく整理整頓することも感性の向上にも役立つのです。

そして最後に、最も感性を高める日常における子どもとの会話です。
それは、「どう感じた?(HOW)」「どう思った?」という
マジック・ワードを日常生活に取り入れることです。

現代の教育では「何?」「誰?」「いつ?」「どこ?」
挙句の果てには「どっち?」というという質問に答える勉強が多いのですが、
教育において最も大切なことは「なぜ?」「どうすればいい?」という疑問です。(「なぜ?」は論理思考を育成するマジック・ワード)テストには
「何?」「誰?」「いつ?」「どこ?」「どっち?」しか出ないから、
知識だけで充分と思われる人がいます。

このような人は学校の勉強なんて社会に出てからまったく役に立たないといいます。これは役に立たない方法で知識を頭に叩き込んでしまったからです。

WHYとHOWの視点

私が指導した生徒の中で非常に“頭のいい子”は、
常に「なぜ?(WHY)」「自分はどう思うか?(HOW)」という
2つの視点が勉強に入っていました。
意味を理解し、結果として知識がインプットされるという
プロセスが本物の教育です。

私は授業において
「なぜ?(論理育成)」「どうすればいい?(感性育成)」を取り入れましたが、
ここでは感性に関する例をご紹介します。

私:(国語の授業で)「このときの主人公の気持ちは?」
生徒:「悲しい気持ちだと思います」
私:「なぜ悲しい気持ちになる? 嬉しい気持ちになる人もいるんじゃないの」
生徒:「この文章の中で、主人公が暗い面持ちで歩く場面があるので
そう思いました」
私:「じゃ、もし君がこの場面にいたらどういう反応する?
同じように悲しげな行動をとるか?」
生徒:「たぶん、そんな気持ちにはなりませんね。
この主人公と僕はちょっと性格が違うかも」

「君ならどうする?」という視点を授業に入れています。
国語の授業では通常このような質問はしません。
あくまでも文章に書いてあることだけで考えていきます。

しかし、「君ならどうする?」といわれたとたんに、頭が働きだし、心が動き、
自分事となって、生徒はこの文章の世界に引き込まれます。
世界に入ってしまえばどんな設問にも答えられます。

国語ができる人は、文章の中に入り込み、自分がそこにいます。
しかしほとんど多くの生徒が、これができません。
なぜなら問題を解くために読んでおり、どこに答えがあるか探すためです。
これは本末転倒で、本当は設問を気にせずに文章の世界に入れば
結果として設問は解けてしまうのです。私は、いつも生徒を文章の世界に引き込みました。その魔法の言葉が「君ならどうする?(HOW)」でした。

これまでお話してきましたように、論理はとても重要です。
しかし、論理よりも優先すべきこととして、
感性を高めるための訓練を日常生活で行ってしまうことです。
話題は日常の些細なことで良いのです。
友達とのこと、学校のこと、趣味のこと、喧嘩したこと、
テレビでのニュースでも何でも題材になります。

「自分だったらどうする?どうしたい?どう感じた?」
という視点が感性を育成していきますので、
日常の子どもさんとの自然な会話に取り入れていただくと良いでしょう。

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